第182回教父研究会は 対面(東京大学駒場キャンパス)とZoomを使用したハイブリッド形式での開催を予定しています。皆様のご参加を心よりお待ち申し上げています。
日時:2024年9月22日(日)14:00–18:00 ※ 通例と異なり日曜日の開催となります。
会場:東京大学駒場キャンパス18号館4階コラボレーションルーム1 ※ 教室については、当日18号館1階入り口に案内を貼ります。
オンライン・ミーティングの URL はメール・手紙にて会員の皆様にお知らせしています。届いていない場合は、お手数ですが事務局までお問い合わせください。
※ URL、ミーティングID、パスコードの第三者への拡散は、くれぐれもご遠慮ください。
※ 参加にあたっては、次の三点を守ってください。
1. 表示名を「氏名」にしてください。
2. 司会者・発表者以外は、音声を「ミュート」にしてください。質疑応答の際に司会者に指名されたときのみ、「オン」にしてください。
3. 質問するときは「手を挙げる」機能を用い、司会者に指名されるのをお待ちください。
非会員の参加も可能となっております。関心のありそうなお知り合いがいらっしゃる場合は、「非会員専用参加受付フォームhttps://forms.gle/6ZJ5wenetP7s5X9V8」をご案内ください。
発表題目 1: 同意しないことの誤り——アウグスティヌス・キケロ・アカデメイア——
発表者:安田将(京都大学)
要旨:
AugustinusはContra Academicosにおいて二人の旅人(信じやすい旅人Aと信じないと決めている旅人B)の寓話を示している(3.15.34)。その寓話は、不確実なものへの同意を差し控える方針によって誤りを確実に避けようとする懐疑的アカデメイアの立場を標的としている。つまり、旅人Bは(なんらかの行為をするために)不確実なものを(真でありそうだと)是認せざるをえない以上、偽なることを(真でありそうだと)是認する場合がある。その場合、旅人Bは「偽なる道に従っている」点で、旅人Aが(信じやすい性格のために、偽なるものを真だと同意して)なしうる当の行為と同様に誤っている。ゆえに、不確実なものへの同意を差し控える方針は、ひとを誤りから必ずしも免れさせない。
しかしながら、二人の旅人の寓話の導入部ではもう一つの誤りが挙げられている。「真なる道に従わない」というその誤りは、Blake Duttonの解釈によると、懐疑的アカデメイアに対するいっそう根本的な批判を示すものである。つまり、真でありそうなもの以外を是認しない(もちろん同意もしない)旅人Bは、真でありそうでないが実際には真であるものを是認することが(当然)ありえず、かつその種の重要な真理が存在する。ゆえに、真なる道に従うことに必ず失敗する。(対して旅人Aは、同意する用意があり、また信じやすい性格のため、真でありそうでないものに同意することがありえる。ゆえに、真なる道に従いうる。)
真でありそうでない真理——これを(真であるとも真でありそうだとも、ただしもちろん偽であるとも)信じていないこと。それは、なぜ・どのような種類の誤りなのか? 本発表ではこの問いに正面から答えることは(答えることができないため)せず、その誤りに似た(しかし異なる)誤りの指摘を懐疑的アカデメイアをめぐるCiceroのテキストのなかに探り、それとの対比によって間接的に特徴づける。
発表題目 2: 『ソリロクイア』における真理の転換
発表者:有賀雄大(東京大学)
要旨:
「真であるとはいかなることか」という真理の定義そのものを問う真理論は、中世哲学の主題の一つであり、De Veritateと題した作品も複数存在する。それでは、人はなぜ、どのような思いから、真理の定義について語るのだろうか。こうした問題意識のもと、本発表ではアウグスティヌスの『ソリロクイア』を扱う。周知の如く、同書の表向きの主題は魂の不滅証明であるが、実はその過程で練り上げられる存在論的な真理・虚偽概念こそが隠れた中心主題である。私はまずこの真理論の特質を、アウグスティヌスの念頭にあった論敵、すなわち、特定の観点と事象との一致・不一致関係として真理・虚偽を把握しようとする従来の真理観との対比において明らかにする。そこで重要なのは、「真」の対となる「偽」の定義をめぐる議論である。アウグスティヌスは第二巻の「偽」をめぐる長大な議論の中で、従来の偽概念が、誤るという現象の表層しか記述しておらず、誤りの成立を暗に支えている前提を取り逃がしていることを示す。それは第一に、偽は必ず何らかの「真を模倣する」ことで成立するという関係であり、第二に、そこには意志を持つ「人」の振る舞いがあるという点である。さらにこうした真理・虚偽概念の変革は、『ソリロクイア』全体の文脈を背景として見るならば、偽を避け真を探究するというありふれた人間の営みを、神へと向かう運動の一部として解釈する理論的な努力と見做すことができる。
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清泉女子大学文学部文化史学科
坂田奈々絵研究室
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