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第180回教父研究会例会のご案内

第180回教父研究会は 対面(東京大学駒場キャンパス)とZoomを使用したハイブリッド形式での開催を予定しています。皆様のご参加を心よりお待ち申し上げています。

日時
:2024年3月23日(土)14:00–18:00

会場:東京大学駒場キャンパス18号館1階メディアラボ2(最近よく使っていた4階の部屋ではありませんのでご注意ください)

オンライン・ミーティングの URL はメール・手紙にて会員の皆様にお知らせしています。届いていない場合は、お手数ですが事務局までお問い合わせください。

※ URL、ミーティングID、パスコードの第三者への拡散は、くれぐれもご遠慮ください。
※ 参加にあたっては、次の三点を守ってください。
1. 表示名を「氏名」にしてください。
2. 司会者・発表者以外は音声を「ミュート」にしてください。質疑応答の際に司会者に指名されたときのみ「オン」にしてください。
3. 質問するときは「手を挙げる」機能を用い、司会者に指名されるのをお待ちください。

非会員の参加も可能となっております。関心のありそうなお知り合いがいらっしゃる場合は、「非会員専用参加受付フォームhttps://forms.gle/y9ZjGwMqM6U11NsS8」をご案内ください。

発表題目 1:ディオニュシオス・アレオパギテースにおける祈りと讃美

発表者:寺島奈那(早稲田大学)

要旨
 本発表では、ディオニュシオス・アレオパギテース『神名論』における「神の名の解明」の理解の一助として、「祈り」と「讃美」という行為の性質と内容を検討する。神の名は、それが「神の」名である限り、ただ呼ばれるものではなく、神に祈りを捧げ、神を讃えるために用いられるものである。ディオニュシオスは『神名論』において神の名を論じる際、重ねてそれを「讃美する」という表現を用いる。そのため、ディオニュシオスにおいて讃美は神の名に対する基本姿勢であると言える。対して祈りという語は『神名論』では第3章で用いられるのみである。しかし、そこで示されるディオニュシオスの祈りの理解は、新プラトン主義、特にイアンブリコスやプロクロスの祈りの議論のその由来を持つものであり、同様に新プラトン主義的な理論を用いて述べられる神の名と関連して鍵概念になると考えられる。
 本発表では、ディオニュシオスの思想を新プラトン主義的な背景から理解するという方針を採り、讃美と祈りについて、『神名論』での用例を中心に、他のディオニュシオスの著作や新プラトン主義者の著作での用例も併せて確認しながら、その特徴や内容を検討する。まず『神名論』第3章の祈りについての記述を検討し、ディオニュシオスの祈りの特徴と神の名との関係を明らかにする。次に、祈りの方法の一つとして讃美を取り上げ、神の名が常に讃美されるものである理由を示す。これらの検討を経て、名を介した神と人間の交流の内容を、人間の行為の側から提示することが、本発表の目標である。

発表題目 2: 『サラセン人とキリスト教徒との対話』における「イスラーム」との神学論争(仮題)

発表者:荻野美櫻子(東京大学)

要旨
 ダマスコスのヨアンネス(c. 675 – c. 750)は、最後のギリシア教父として名高いと同時に、「イスラーム」に対して初めて体系的に反駁した神学者としても知られている。ヨアンネスの「イスラーム」に関する著作として伝わるものは二つあり、一つは『知識の泉』第二部「異端について (De Haeresibus)」第100/101章「イシュマエル派について」、もう一つは『サラセン人とキリスト教徒との対話』である。前者は概説的な記述であるのに対し、後者はより神学的な内容に焦点を絞った著作であり、両者は相補的な関係にあると見なされている。
 『対話』の内容は二つに大分される。一つはキリスト論で、これは100/101章の中でも触れられている。もう一つは悪の起源や自由意志の問題で、これは100/101章内では触れられず、むしろ『知識の泉』第三部「正統信仰論」の内容と関連するものである。
 従来の研究では、100/101章と『対話』の相補関係や、テクスト内に登場する重要概念が同時代の「イスラーム」思想をどれ程正確に反映しているかが強調されてきた。しかし本発表では、当時の「イスラーム」の実際は脇に置き、「正統信仰論」のテクストと比較しながら、『対話』における論争を検討する。これを通じて、ヨアンネスの目に「イスラーム」がどのような存在として映っていたのか、そして「イスラ―ム」との論争がヨアンネスの思想にどのような影響を与えたのかを解明する一助としたい。


この件に関するお問い合わせは下記教父研究会事務局にお願いいたします。

〒141-8642東京都品川区東五反田三丁目16-21
清泉女子大学文学部文化史学科
坂田奈々絵研究室
mail: secty.jsps [at] gmail.com

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教父研究会特別講演会のご案内

年明け1月に、オーストラリアのUniversity of Divinityよりアダム・クーパー博士を招聘した特別講演会を実施することになりました。皆様のご参加を心よりお待ち申し上げます。

日時:2024年1月20日(土)16:00-18:00 

会場:東京大学駒場キャンパス18号館4階コラボレーションルーム1

◆ 非会員の参加も可能となっております。ご関心のありそうなお知り合いの方がいらっしゃいましたら、非会員専用参加受付フォームをご案内ください。

題目:The sexual body as imago and memoria: a 7th century expansion of a patristic motif

講演者:Dr. Adam Cooper

メッセージ
  In Augustine’s anthropology, the remembrance (memoria) of God, along with knowing and loving God, realises the trinitarian image in the human soul. Other thinkers, including Gregory Nyssa and Maximus Confessor, similarly proposed an intrasubjective, psychological imago trinitatis. In Anastasius of Sinai (fl. ca. 680), however, we find a rare speculative proposal that finds this trinitarian image in the sexually differentiated, fecund, intersubjective bodies of Adam, Eve and their offspring. The relevant text comes from an assemblage of more miscellaneous works of Anastasius, in this case, from one of eight surviving homilies (ed. Uthemann, 1985). Anastasius develops a rationale for the special modalities by which Adam, Eve, and their (unnamed) son came into being, tentatively proposing in outline a typological relation between these modalities and the three persons of Godhead, a relation whose additional referential orientation to Christ constitutes a key aspect of the divine image in man. In the terms of this typology, the body in its maleness and femaleness thereby – and surprisingly – is understood by Anastasius as constituting an image and memoria of God, recollecting in its carnal interaction a triadic structure analogous to the divine relations, and proposing a vocation whose goal lies in fruitful, interpersonal communion.

紹介者メッセージ

 今回、7世紀後半に活躍したシナイのアナスタシウスAnastasius Sinaitaの三位一体論に関する特別講演を行うAssociate Professor Adam Cooperは、現在メルボルンのカトリック神学大学において講師を務めています。英国ダラム大学から学位を取得し、さらにローマの教皇庁立ヨハネ・パウロ二世研究所からSTD(教皇庁神学博士号)を取得した後、ダラム大学、メルボルンの正教会研究所、ヨハネ・パウロ二世結婚家族科学研究所において、神学と教父学に関する教育に従事してきました。2005年にはオクスフォード大学出版局のEarly Christian StudiesからThe Body in St. Maximus the Confessor: Holy Flesh, Wholly Deifiedを、2008年には同大学出版局からLife in the Flesh: An Anti-Gnostic Spiritual Philosophyを出版しています。さらに、2014年にはFortress PressからNaturally Human, Supernaturally God: Deification in Preconciliar Catholicismを、2018年にはAngelico PressからHoly Eros: A Liturgical Theology of the Bodyを出版するのみならず他にも多数の論文を刊行し、すぐれた業績をあげています。(上村直樹)

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JSPS Special Lecture 2024

JSPS Special Lecture will be given by Assoc Prof Adam Cooper (Catholic Theological College, University of Divinity, Melbourne VIC) at Komaba Campus, The University of Tokyo, on 20 January 2024.

  • Presenter: Assoc Prof Adam Cooper (Catholic Theological College, Melbourne)
  • Title: The sexual body as imago and memoria: a 7th century expansion of a patristic motif
  • Abstract:
    In Augustine’s anthropology, the remembrance (memoria) of God, along with knowing and loving God, realises the trinitarian image in the human soul. Other thinkers, including Gregory Nyssa and Maximus Confessor, similarly proposed an intrasubjective, psychological imago trinitatis. In Anastasius of Sinai (fl. ca. 680), however, we find a rare speculative proposal that finds this trinitarian image in the sexually differentiated, fecund, intersubjective bodies of Adam, Eve and their offspring. The relevant text comes from an assemblage of more miscellaneous works of Anastasius, in this case, from one of eight surviving homilies (ed. Uthemann, 1985). Anastasius develops a rationale for the special modalities by which Adam, Eve, and their (unnamed) son came into being, tentatively proposing in outline a typological relation between these modalities and the three persons of Godhead, a relation whose additional referential orientation to Christ constitutes a key aspect of the divine image in man. In the terms of this typology, the body in its maleness and femaleness thereby – and surprisingly – is understood by Anastasius as constituting an image and memoria of God, recollecting in its carnal interaction a triadic structure analogous to the divine relations, and proposing a vocation whose goal lies in fruitful, interpersonal communion.
  • Date & Time: 16:00-18:00, 20 January 2024
  • Place: Komaba Campus, The University of Tokyo

第179回教父研究会例会のご案内

第179回教父研究会は 「アウグスティヌス著作集」の完結を記念し、富山大学名誉教授の松崎一平先生より、翻訳や刊行に関わる様々なことについてご講演いただきます。司会進行は出村和彦先生に務めていただきます。
また、例会の前には総会が開催されます。皆様のご参加を心よりお待ち申し上げております。

なお、今例会は、対面(東京大学駒場キャンパス)とZoomを使用したハイブリッド形式での開催を予定しております。

オンライン・ミーティングの URL はメール・手紙にて会員の皆様にお知らせしています。届いていない場合は、お手数ですが事務局までお問い合わせください。

参加にあたっては、次の三点を守ってください。
1. 表示名を「氏名」にしてください。
2. 司会者・発表者以外は音声を「ミュート」にしてください。質疑応答の際に司会者に指名されたときのみ「オン」にしてください。
3. 質問するときは「手を挙げる」機能を用い司会者に指名されるのをお待ちください。

非会員の参加も可能となっております。関心のありそうなお知り合いがいらっしゃる場合は、「非会員専用参加受付フォーム https://forms.gle/upmwAC15f7N7hoDE9」をご案内ください。


日時
:2023年6月24日(土)13:00-13:30 総会;13:30-16:00 例会

会場:東京大学駒場キャンパス18号館4階コラボレーションルーム3

発表題目: 『詩編注解(6)』に取り組んで―『詩編注解』全6冊の、つまりは「アウグスティヌス著作集」全36冊の完結にあたって―

発表者:松崎一平

メッセージ
 まさにこの6月下旬に、教文館刊「アウグスティヌス著作集」の第20巻第2分冊(20/II)『詩編注解(6)』が刊行される予定です。それをもって、アウグスティヌスの最長の著作たる『詩編注解』の全訳が完成するとともに、「アウグスティヌス著作集」全36冊が完結することになります。わたしが院生だった1979年1月に最初の第4巻『神学論集』が刊行されてから、およそ45年を要したことになります(わたしの研究者としてのキャリアにすっかり重なります)。『神学大全』の全訳の完成に匹敵する大きな成果だと思われます。幸いにもこの記念すべき『詩編注解(6)』にかかわらせていただいた一人のアウグスティヌス研究者として、長いあいだ訳に取り組んできて、あるいはいよいよ本とするべく、いわゆる「解説(要約)」や「聖句索引」をまとめるなかで、苦労したこと・工夫したこと・感じたこと・気づいたこと・考えたことなどを、ざっくばらんにお話しさせていただこうと思っています。そうするなかで、日本におけるアウグスティヌス研究の現状や課題について、管見のかぎりでの欧米の現状を踏まえながら、わたしの考えるところを少しだけお話しさせていただけたらと考えています。


この件に関するお問い合わせは下記教父研究会事務局にお願いいたします。

〒141-8642東京都品川区東五反田三丁目16-21
清泉女子大学文学部文化史学科
坂田奈々絵研究室
mail: secty.jsps [at] gmail.com

第178回教父研究会例会のご案内

第178回教父研究会は 対面(東京大学駒場キャンパス)とZoomを使用したハイブリッド形式での開催を予定しております。また、例会の前には、臨時総会が開催されます。前回の総会にてお知らせしました通り、会誌『パトリスティカ』のオンライン刊行への移行が議題となります。皆様のご参加を心よりお待ち申し上げております。

日時:2022年10月1日(土)14:00-14:30 臨時総会;14:30-18:00 例会

会場:東京大学駒場キャンパス18号館4階コラボレーションルーム1

オンライン・ミーティングの URL はメール・手紙にて会員の皆様にお知らせしています。届いていない場合は、お手数ですが事務局までお問い合わせください。

参加にあたっては、次の三点を守ってください。
1. 表示名を「氏名」にしてください。
2. 司会者・発表者以外は音声を「ミュート」にしてください。質疑応答の際に司会者に指名されたときのみ「オン」にしてください。
3. 質問するときは「手を挙げる」機能を用い司会者に指名されるのをお待ちください。

非会員の参加も可能となっております。関心のありそうなお知り合いがいらっしゃる場合は、「非会員専用参加受付フォーム https://forms.gle/GTNF6z8YNvMYsEWr9」をご案内ください。

発表題目 1: 4世紀後半のシリア・キリキアにおけるイグナティオスの記憶の活用─偽作書簡集とヨアンネス・クリュソストモスの講話における殉教の位置づけをめぐって─

発表者:砂田恭佑(東京大学)

要旨
 イグナティオスは2世紀初頭にアンティオキアで監督を務め、ローマで殉教した人物であり、その書簡集(7通)が知られている。またその殉教を熱望する鮮烈な言葉遣いは研究者の関心をも惹きつけてきた。さて、殉教が一応は過去のものとなった4世紀後半にあって、殉教者イグナティオスの記憶はどのように継承されていたのか。この時期に出現した二つのテクストが、この問いに対する回答を示している。
 一方は、上記の書簡に改竄を加え、新たに6通を附した偽作書簡集である。その年代と著者が研究者たちの間で議論となってきたが、年代は4世紀後半、著者はシリア近辺の穏健な従属論を奉じる集団に属するというのが多数派の合意といってよい(発表者はその背景をより詳細に特定できると考える)。この偽作者=改竄者の主たる関心は神学と教会規律にあり、真正書簡でも展開されているそれらの論点を同時代の読者に合わせて膨らませる際、殉教に関しては(せっかくの印象的な)文意を枉げることもいとわない。
 他方にはヨアンネス・クリュソストモスの『聖イグナティオス講話』がある。イグナティオスの主教としての徳、使徒との関係、高貴な殉教などが講話の主たる主題であるが、前者二つはパウロ書簡に基礎づけて語られ、個性に着目した賞賛は殉教者としての一面を語る際に最も現れる。殉教記念日の講話である以上当然とも言えるが、アンティオキアの状況や崇敬の実態の中に置くと、市の信徒のアイデンティティー形成に細心の注意を払う説教者像も垣間見える。
 本発表では、とりわけ両テクストの殉教に対する扱いを比較し、両者とその担い手の関心を明らかにすることを試みる。

発表題目 2: 対話篇を書くこと─アウグスティヌス前期著作における文体の問題─

発表者:石川知輝(東京大学)

要旨
 アウグスティヌスは多様な文体を駆使した書き手であったが、本発表はその中でも前期に書かれた対話篇という文体に注目し、その哲学的意義を考察する。
 対話篇はアウグスティヌスにおいて前期著作の8作品にしかみられず、中期以降は全く執筆されることがなかった。このことからしばしば、前期対話篇は古代哲学の表面的模倣であり、彼自身の思想の未熟さを示すものであると評価されてきた。それに対して本発表では、中期・後期の成熟した思想の側から前期著作を検討するのではなく、前期著作においてアウグスティヌスが実現しようとしていた哲学の営みとは何であるか、という問いのもとに対話篇という文体について考察する。本発表が提示することを目論むのは以下の点である。
 1. アウグスティヌスの哲学において、著作の内容(=哲学の対象)と形式(=文学の対象)という二分法は当てはまらない。むしろ文体はアウグスティヌスの哲学的実践の重要な一端を担うものである。
 2. 対話篇という文体は著作内では議論の説得力をもたらす仕掛けとして、著作外では読者に対する哲学のすすめ(プロトレプティコス)として効果を発揮する。
 3. 以上で示された対話篇の効果は、『教師論』で言語の働きの限界として示される「促し admonitio」の概念によって説明することができる。


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第177回教父研究会例会のご案内

第177回教父研究会は 2022年6月25日(土)オンライン(Zoom)にて開催される予定です。また、例会の前には総会も開催されます。皆様のご参加を心よりお待ち申し上げております。

日時:2022年6月25日(土)14:00-14:30 総会 ── 14:30-17:00 例会

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参加にあたっては、次の三点を守ってください。
1. 表示名を「氏名」にしてください。
2. 司会者・発表者以外は音声を「ミュート」にしてください。質疑応答の際に司会者に指名されたときのみ「オン」にしてください。
3. 質問するときは「手を挙げる」機能を用い司会者に指名されるのをお待ちください。

非会員の参加も可能となっております。関心のありそうなお知り合いがいらっしゃる場合は、「非会員専用参加受付フォーム https://forms.gle/5RgJ3P8jTqEv8XAfA」をご案内ください。

懇親会は実施しませんが、例会後もしばらく Zoom ミーティングを開いたままにいたしますので、自由にご歓談ください。

発表題目:”ex opere opetato” と “res et sacramentum” ── 秘跡論の課題とトマス・アクィナス ──

発表者:桑原直己

要旨:
 アウグスティヌスがドナトゥス派と格闘した成果は、秘跡の有効性は執行者の善悪にはよらないとする、いわゆる事効性 ex opere opetato の原理として、その後のカトリック教会の基本方針となっていった。しかし、事効性の原理に対する硬直した固着は、しばしばカトリック教会とプロテスタント教会との対立点ともなっている。
 トマス・アクィナスの秘跡論は、(1)「単なる秘跡sacramentum tantum」、(2)「実在にして秘跡なるものres et sacramentum」、(3)「純粋に実在であり秘跡ではないものres tantum et non sacramentum」という「秘跡の三重構造」の理論を踏まえて展開している。
 (1)は秘跡における「目に見える外的な儀礼」であり、(3)は「霊魂の奥深いところで起る恩恵の内的な働きかけ」である。秘跡の本質をめぐるプロテスタント神学とカトリック神学との対立をもたらしている「事効性の原理に対する硬直した態度」とは、この(1)と(3)との両者を分離して捉えようとする傾向、さらに言えば(1)をそれ自体完結したものとして考える傾向であると考えられる。
 本発表では、トマスの秘跡論における(2)「実在にして秘跡なるもの」の意義に着目し、トマスの秘跡論がアウグスティヌスに代表される教父以来の伝統を踏まえつつ、現代秘跡神学が直面するエキュメニカルな課題についても示唆を与えるものであることを示したい。


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第176回教父研究会例会のご案内

第176回教父研究会は 2022年3月26日(土)オンライン(Zoom)にて3名の研究者によるシンポジウムとして開催される予定です。皆様のご参加を心よりお待ち申し上げております。

日時:2022年3月26日(土)14:00 – 17:30

会場:ミーティング URL はメール・手紙にて会員の皆様にお知らせしています。届いていない場合は、お手数ですが事務局までお問い合わせください。

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1. 表示名を「氏名」にしてください。
2. 司会者・発表者以外は音声を「ミュート」にしてください。質疑応答の際に司会者に指名されたときのみ「オン」にしてください。
3. 質問するときは「手を挙げる」機能を用い司会者に指名されるのをお待ちください。

非会員の参加も可能となっております。関心のありそうなお知り合いがいらっしゃる場合は、「非会員専用参加受付フォーム https://forms.gle/XYm5pyMnfKLTLTD78」をご案内ください。

懇親会は実施しませんが、例会後もしばらく Zoom ミーティングを開いたままにいたしますので、自由にご歓談ください。

シンポジウム:
 アウグスティヌスの言語論──再考

趣旨説明:
 教父アウグスティヌスほど〈ことば〉を大切にした思想家は少ない。20歳の時に文法学の教師となり、その2年後に修辞学の教師となった彼は、聖書との出会いによって〈神のことば〉を伝達する教師となったが、その思索の中心には常に〈ことば〉の問題があった。
 本シンポジウムの提題者のひとり加藤武は『アウグスティヌスの言語論』(創文社、1991年)において彼の言語思想の深みを言語哲学的視点、および解釈学的視点から明らかにしたが、今回のシンポジウムはそこでの考察を承け、最新の研究動向を踏まえつつ、アウグスティヌスの言語思想をさらなる広がりと深みにおいて歴史的に明らかにすることを目指す。それぞれの提題は次の通りである。

 1. 水落健治、アウグスティヌスの言語思想の展開──『問答法について』から『キリスト教の教え』まで
 2. 小沢隆之、アウグスティヌスの uerbum cordis と聖書解釈──神のことばを人間の言葉によって語ろうとすること
 3. 加藤武、声とことばについて──『キリスト教の教え』1.13 における


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〒141-8642東京都品川区東五反田三丁目16-21
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第175回教父研究会例会のご案内

第175回教父研究会は 2021年12月4日(土)オンライン(Zoom)にて開催される予定です。皆様のご参加を心よりお待ち申し上げております。

日時:2021年12月4日(土)14:30 開始

会場:ミーティング URL はメール・手紙にて会員の皆様にお知らせしています。届いていない場合は、お手数ですが事務局までお問い合わせください。

参加にあたっては、次の三点を守ってください。
1. 表示名を「氏名」にしてください。
2. 司会者・発表者以外は音声を「ミュート」にしてください。質疑応答の際に司会者に指名されたときのみ「オン」にしてください。
3. 質問するときは「手を挙げる」機能を用い司会者に指名されるのをお待ちください。

今回は非会員の参加も可能となっております。関心のありそうなお知り合いがいらっしゃる場合は、「非会員専用参加受付フォーム https://forms.gle/LtWhdaCsWS9y9pV79」をご案内ください。

懇親会は実施しませんが、例会後もしばらくZoomミーティングを開いたままにいたしますので、自由にご歓談ください。

発表題目:スュランにおけるパウロ──近世神秘主義における身体の詩学の一断面

発表者:渡辺優(東京大学)

要旨:
 17世紀ボルドーのイエズス会士ジャン=ジョゼフ・スュランは、西欧近世に現れ、そして消えていった「神秘主義(la mystique)」という知の、最も鮮烈な体現者の一人であった。20世紀後半以降、とりわけミシェル・ド・セルトーによる研究を画期として、スュランはじめ近世神秘主義研究は大きく進展し、旧来の神秘主義理解を根本から刷新するとともに、現代におけるキリスト教霊性研究にも新たな地平を切り拓いてきた。
 こうしたなか、近年の研究において改めて重要な論点として浮上してきているのが「身体」である。身体は、セルトー未完の神秘主義論の枢要点でもあった──彼の来るべき神秘主義論は「身体の詩学」として構想されていた──が、その後の人文社会科学の展開とも相俟って、キリスト教霊性・神秘主義における身体の問題は、なお再発見されるべき領域として残されている。
 発表者は、西欧近世神秘主義を軸にキリスト教霊性の問題系を広く視野に収めつつ、そこにおいて身体が果たす代替不可能な役割を探りたいと考えている。極めて大きな課題であるが、本発表では、スュランにおけるパウロ解釈に焦点を置いて、ひとつの、だが内容豊かな断面を切り出すことをねらう。
 発表者はすでに、「スュランにおけるパウロ研究序説──『パウロの神秘論』の風を受けて」(『パトリスティカ』第25号掲載予定)において、「ルーダンの悪魔憑き」事件以後のスュランに認められる「ソーマ的変容」が、まさしく「はらわたにつきささったあなたのことばを身に帯び」(『告白』IX, 2, 3)つつ生きる、パウロ=アウグスティヌス的神秘論の系譜に位置付くことを明らかにした。本発表では、近世神秘主義へと至るこの系譜とその思想史的射程をより立体的に把握することを試みるとともに、パウロのことば、わけても聖霊を語ることばが、スュランのことばをいかに支え、触発し、それと共鳴しつつ息吹いているかを看取したい。


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第174回教父研究会例会のご案内

第174回教父研究会は 2021年 9月 25日(土)オンライン(Zoom)にて開催される予定です。皆様のご参加を心よりお待ち申し上げております。

日時:2021年 9月 25日(土)14:30 開始

会場:ミーティングURL, ID, パスコードをメール、あるいは手紙にて会員の皆様にお知らせしています。届いていない場合は、お手数ですが事務局までお問い合わせください。

参加にあたっては、次の三点を守ってください。
1. 表示名は「氏名」にしてください。
2. 司会者・発表者以外は、音声をミュートにしてください。質疑応答の際に司会者に指名されたときのみ、オンにしてください。
3. 質問するときは「手を挙げる」機能を用い、司会者に指名されるのをお待ちください。

今回は非会員の参加も可能となっております。関心のありそうなお知り合いがいらっしゃる場合は、こちらの「非会員専用参加受付フォーム」をお知らせしてください。

懇親会は実施しませんが、例会後もしばらくZoomミーティングを開いたままにいたしますので、自由にご歓談ください。

発表題目:アウグスティヌスにおける悪なる欲望の癒し―superbiaとhumilitasを軸に―

発表者:渡邉蘭子(大東文化大学)

要旨:
 アウグスティヌスは晩年に向かうほど悪なる欲望が現世で残り続けることを強調するようになった。洗礼を受けたとしても身体は来世において贖われるため、特に、歪んだ悪なる身体的欲望は現世に生きる限り残り続ける。この点はルターやカルヴァンなどの宗教改革者たちに引き継がれ、「罪の赦し」の強調や「宣義」としての義の主張へとつながった。他方で、アウグスティヌス自身は現実的な癒し、いわゆる「成義」についても語っている。しかし、悪なる身体的欲望の残存と癒しがどのような関係にあるのかについてはこれまで十分に論じられていない。
 この点を明らかにするための重要な軸は「高慢(superbia)」と「卑賎(humilitas)」という二つの対比的なあり方である。アウグスティヌスによれば、すべての罪の根源は神に背く「高慢」であり、悪なる身体的欲望も根本的にはそこから生じている。そうした「高慢」というあり方がキリストの受肉と十字架の死による「卑賎」によって癒されることにより、悪なる身体的欲望も癒されていく。本発表ではそうした点について『三位一体論』を中心に後期著作を分析する。
 こうした分析をとおして、アウグスティヌスが悪なる欲望の残存とその癒しを循環的に捉えていることを示したい。すなわち、悪なる欲望は現世では残り続けるが、そのことは、より根本的な罪である「高慢」を避け、「卑賎」になって神に向かうことができる契機となり、現実的な癒しにつながっている。これが「力は弱さの中でこそ十分に発揮される」(2 Cor. 12: 9) の意味として考えられている事態である。

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第173回教父研究会例会のご案内

第173回教父研究会は 2021年 6月 19日(土)特別企画として、宮本久雄『パウロの神秘論―他者との相生の地平をひらく』(第33回和辻哲郎文化賞・学術部門)の合評会を開催することとなりました。また、例会の前には総会も開催されます。皆様のご参加を心よりお待ち申し上げております。
 なお、今回もオンライン(Zoom)での実施となります。

日時:2021年 6月 19日(土)

プログラム
 13:30-14:00 総会
 14:00-14:30 著者講演「パウロから出発して」
 14:30-15:30 評者による提題
  田島照久「脱在とハヤ・オントロギアを破る神秘思想―義化と聖化の観点から」(仮)
  渡辺優「スュランにおけるパウロ―『パウロの神秘論』の風を受けて」
  黒住真「日本の哲学・神学から宮本久雄『パウロの神秘論』はどう見えるか」
 15:30-16:00 著者・評者によるディスカッション
 16:00-17:00 全体討論

会場:ミーティングURL, ID, パスコードをメール、あるいは手紙にて会員の皆様にお知らせしています。届いていない場合は、お手数ですが事務局までお問い合わせください。

参加にあたっては、次の三点を守ってください。
 1. 表示名は「氏名」にしてください。
 2. 司会者・発表者以外は、音声をミュートにしてください。質疑応答の際に司会者に指名されたときのみ、オンにしてください。
 3. 質問するときは「手を挙げる」機能を用い、司会者に指名されるのをお待ちください。

今回は非会員の参加も可能となっております。関心のありそうなお知り合いがいらっしゃる場合は、こちらの「非会員専用参加受付フォーム」をお知らせしてください。

懇親会は実施しませんが、例会後もしばらくZoomミーティングを開いたままにいたしますので、自由にご歓談ください。

なお、例会での企画テーマ案も、引き続き募集しております。専用フォーム(https://forms.gle/zcjnLi66WXqWhogaA)にて自由にご提案ください。


この件に関するお問い合わせは下記教父研究会事務局にお願いいたします。

〒153-8902 東京都目黒区駒場3-8-1
東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻・高橋英海
E-mail: secty.jsps[at]gmail.com

※事務局は、6月以降、下記住所に移転する予定です。

〒141-8642 東京都品川区東五反田3-16-21
清泉女子大学文学部文化史学科
坂田奈々絵