第153回教父研究会は、2015年9月26日(土)14時から18時まで、東京大学駒場キャンパス18号館1階メディアラボ2において開かれます。
- 徳田安津樹(東京大学)「神を「測量」する―クザーヌスの「知ある無知」と古代の数学的神学―(仮)」
- メッセージ:ニコラウス・クザーヌス (1401-64) は枢機卿や司教として教会・修道院改革に尽力し、法学・数学・自然学・写本蒐集など様々な場面で活躍しつつ、独特な哲学・神学思想を形成した人物として知られている。このような多面性のためにクザーヌスの複雑な思想的背景については長く議論されているが、近年の研究により、数学的・幾何学的思惟の背景が明らかにされつつある。本発表ではこれらの研究を引き受けて、『知ある無知について』(De docta ignorantia, 1440) を中心に、クザーヌスの前期思想における三位一体論・キリスト論と古代哲学者・教父の数学的議論の関係とその意義を明らかにすることを目的とする。
『知ある無知』の体系は、「あらゆる探究は前提された確実なこととの比較によって比を媒 介としてなされる」という思考(本発表ではこれを「測量的認識論」と呼ぶ)に基づいて おり、そのため本著において真理たる神はまずもって「厳密な相等性」(aequalitas praecisa) とされる。この「相等性としての神」と新プラトン主義的な「一性としての神」の関係から三位一体論が展開されるが、クザーヌスはその三にして一なる神の把握を助けるために「古き人々の道」(vetrum via) として数学・幾何学を用いている。発表内ではこうした数学的議論がクザーヌスの神学的議論にとっていかなる役割を果たしているのかを示して行く。
- メッセージ:ニコラウス・クザーヌス (1401-64) は枢機卿や司教として教会・修道院改革に尽力し、法学・数学・自然学・写本蒐集など様々な場面で活躍しつつ、独特な哲学・神学思想を形成した人物として知られている。このような多面性のためにクザーヌスの複雑な思想的背景については長く議論されているが、近年の研究により、数学的・幾何学的思惟の背景が明らかにされつつある。本発表ではこれらの研究を引き受けて、『知ある無知について』(De docta ignorantia, 1440) を中心に、クザーヌスの前期思想における三位一体論・キリスト論と古代哲学者・教父の数学的議論の関係とその意義を明らかにすることを目的とする。
- 鳥居小百合(岐阜県立羽島北高等学校講師)「新神学者シメオンの光体験」
- メッセージ:十世紀から十一世紀を生きた新神学者シメオン (949-1022) は、東方キリスト教会において神学者の称号を有する三人のうちの一人である。シメオンの思想は自身の大きな二度の光体験によって確立されており、その思想は当時の教会当局からは危ないものと捉えられていた。なぜならシメオンは教会のヒエラルキーではなく、優れたシメオンの霊的指導者であった師父シメオンの教えを重んじていたからであった。たとえば、師父シメオンの死後、一修道士であった彼のイコンをキリストや聖人たちと並べて飾り、毎日、師父シメオンのための祭儀を執り行うなど、師父シメオンをとても崇めていたのである。シメオンはこの霊的指導者であった師父シメオンを一度目の光体験において見ている。
本発表ではシメオンの二度の光体験について語られている『教理講話』の第十六講話と第二十二講話を考察する。このシメオンの光体験を考察することによって、シメオンの人間性、そして彼の思想の全体像が理解できるからである。
またシメオンの神化思想についても考察してみたい。シメオンの神化思想はこの世から始まっていると『倫理的論考』第十番ではっきり述べている。その箇所を読み解いていきたい。
- メッセージ:十世紀から十一世紀を生きた新神学者シメオン (949-1022) は、東方キリスト教会において神学者の称号を有する三人のうちの一人である。シメオンの思想は自身の大きな二度の光体験によって確立されており、その思想は当時の教会当局からは危ないものと捉えられていた。なぜならシメオンは教会のヒエラルキーではなく、優れたシメオンの霊的指導者であった師父シメオンの教えを重んじていたからであった。たとえば、師父シメオンの死後、一修道士であった彼のイコンをキリストや聖人たちと並べて飾り、毎日、師父シメオンのための祭儀を執り行うなど、師父シメオンをとても崇めていたのである。シメオンはこの霊的指導者であった師父シメオンを一度目の光体験において見ている。