第184回教父研究会例会のご案内

第184回教父研究会は 対面(東京大学駒場キャンパス)とZoomを使用したハイブリッド形式での開催を予定しています。皆様のご参加を心よりお待ち申し上げています。

日時
:2025年3月30日(日)14:00–18:00 ※ 通常と異なり日曜日の開催となります。お気をつけください。

会場:東京大学駒場キャンパス18号館 ※ 教室については確定し次第お知らせし、当日も18号館1階の入り口に案内を貼ります。

オンライン・ミーティングの URL はメール・手紙にて会員の皆様にお知らせしています。届いていない場合は、お手数ですが事務局までお問い合わせください。

※ URL、ミーティングID、パスコードの第三者への拡散は、くれぐれもご遠慮ください。
※ 参加にあたっては、次の三点を守ってください。
1. 表示名を「氏名」にしてください。
2. 司会者・発表者以外は、音声を「ミュート」にしてください。質疑応答の際に司会者に指名されたときのみ、「オン」にしてください。
3. 質問するときは「手を挙げる」機能を用い、司会者に指名されるのをお待ちください。

非会員の参加も可能となっております。関心のありそうなお知り合いがいらっしゃる場合は、「非会員専用参加受付フォームhttps://forms.gle/c6rdPEyDrM1nJoga8」をご案内ください。

発表題目 1: コプト語文献における宣誓形式の発展

発表者:宮川創(筑波大学) モナ・サーウィ(アシュート大学)

要旨
 本発表はコプト語文献における宣誓形式に関する研究である。コプト語は古代エジプト語の最終段階であり、世界最長の書記期間を持つ言語である。本研究では、コプト語文献における宣誓の歴史的背景、用語、形式、および機能について詳細に分析する。
 古代エジプトにおいて宣誓は王、神、あるいはその両方の名において行われ、宗教的、道徳的、社会的側面を融合したものであった。コプト語では「宣誓」を表す単語は方言によって異なり、ⲁⲛⲁϣ(サイード方言・ボハイラ方言)、ⲁⲛⲁⳉ(アクミーム方言)、ⲁⲛⲉϣ/ⲁⲛⲏϣ(ファイユーム方言)などの形式が存在する。宣誓は機能的に「断言的宣誓」と「約束的宣誓」に分類され、それぞれが法的および非法的文脈で使用された。法的文書における宣誓形式は、通常「ⲉⲓⲱⲣⲕ(私は誓う)」という動詞で始まり、神、三位一体、聖人、または世俗的権威の名において誓うという構造を持つ。
 特筆すべきは偽りの宣誓に対する態度である。コプト語文書では偽りの宣誓者(ⲣⲉϥⲱⲣⲕ ⲛⲛⲟⲩϫ)に対する超自然的罰則が強調され、宣誓の重要性を裏付けている。
 本研究は、コプト語における宣誓がグレコ・ローマンの影響を受けながらも古代エジプトの慣行を継続し、法的、社会的、宗教的文脈において紛争解決と合意の検証に重要な役割を果たしたことを明らかにするものである。この研究はコプト社会の理解を深めるとともに、文化的慣行の進化における連続性と変化の相互作用を解明するものである。

発表題目 2: 謙遜を促す弱さ─後期アウグスティヌスにおける欲望の癒しをめぐる議論─

発表者:渡邉蘭子(東北学院大学)

要旨
 アウグスティヌスは、後期のペラギウス派との論争において現世における人間の不完全性を強調するようになり、洗礼を受けたキリスト者であっても悪なる欲望に苛まれ続けると主張した。洗礼を受け、「恩恵の下」にあるとされるキリスト者であっても悪なる欲望に苛まれ続けるとすれば、キリストによる救済とはいかなるものなのかという問いが生じる。実際、アウグスティヌスの主張は現世における恩恵の有効性を制限するとして、当時の論敵であったペラギウス派から批判されただけではなく、今日にいたるまで議論され続けている。
 しかし、ペラギウス派論争においてアウグスティヌスは、この一見すると悲惨な事態である、悪なる欲望に苛まれるということ―「弱さ」―によって神に向かうことができるという点を繰り返し強調した(特にパウロの言葉「力は弱さにおいて完成する」(IIコリ12・9)を根拠にしつつ)。すなわち、悪なる欲望に苛まれることによって、人は自力の限界を認識して謙遜になり、神に向かうことができる。アウグスティヌスにおいてはこのことが救済へとつながる。この考えの背景には、神を必要としない「高慢」こそ罪の根源であり、反対に神を必要とする「謙遜」こそ最もすぐれたあり方であるという思想がある。
 本発表では上記の点を考察すべく、主にペラギウス派論争著作を分析し、アウグスティヌスが後期において救済をどのように捉えていたのかを少しでも解明することを試みる。


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清泉女子大学文学部文化史学科
坂田奈々絵研究室
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