第183回教父研究会例会のご案内

第183回教父研究会は 対面(東京大学駒場キャンパス)とZoomを使用したハイブリッド形式での開催を予定しています。皆様のご参加を心よりお待ち申し上げています。

日時
:2024年12月21日(土)14:00–18:00

会場:東京大学駒場キャンパス18号館 ※ 教室については確定次第お知らせし、当日18号館1階の入り口に案内を貼ります。

オンライン・ミーティングの URL はメール・手紙にて会員の皆様にお知らせしています。届いていない場合は、お手数ですが事務局までお問い合わせください。

※ URL、ミーティングID、パスコードの第三者への拡散は、くれぐれもご遠慮ください。
※ 参加にあたっては、次の三点を守ってください。
1. 表示名を「氏名」にしてください。
2. 司会者・発表者以外は、音声を「ミュート」にしてください。質疑応答の際に司会者に指名されたときのみ、「オン」にしてください。
3. 質問するときは「手を挙げる」機能を用い、司会者に指名されるのをお待ちください。

非会員の参加も可能となっております。関心のありそうなお知り合いがいらっしゃる場合は、「非会員専用参加受付フォームhttps://forms.gle/qnpkR5HwfaPckR5L9」をご案内ください。

発表題目 1: アンティオキア派におけるヒストリアー、ノモス、ロゴス:より包括的なギリシア教父研究に向けて

発表者:砂田恭佑(東京大学)

要旨
 4世紀から5世紀にかけてギリシア語圏で活動したディオドロス、テオドロス、ヨアンネス・クリュソストモス、テオドレトスらを含む「アンティオキア派」は、聖書註解においては字義的・歴史的解釈を採り、キリスト論においてはキリストの人性を重んじた――概説的説明である。全くの誤りではない。しかしその両面がいかに結びつくか、という点の説明は、とても彼らの言葉に即して正確になされているとは言い難い。初めの説明が危ういからである。
 そもそも、日本における教父学にはいくつか大きなナラティブがあるが、アンティオキア派はそのいずれにおいても周縁にしか収まらない。それは単にそれだけの問題かもしれないが、ギリシア教父全般に対する見方が歪められていることのあおりを食っているのだとすれば、看過するわけにはいかない。
 以上を確認したうえで、本発表では、アンティオキア派における諸概念を既存のナラティブを強く警戒しつつ整理し、その思想の一端を捉えなおすことを目指す。まずは「ヒストリアー」(歴史?)である。アンティオキア派は、通常思われているように、あるいはラテン的伝統が整理するように、「ヒストリアー」(的解釈)それ自体を重んじたり、目指したりするわけではなく、むしろ別に論じたい何かがあり、そのための前提としてそういった釈義を行っているに過ぎない。ではその何かとは何か。一方には同時代的論駁があり、他方には独自の神学的構想がある。両論の見通しを、後者については「ノモス」「ロゴス」等の概念を通して、試論として提出することを目指す。

発表題目 2: アウグスティヌス『神の国』13巻9-11章における死の時について――「瞬間(τὸ ἐξαίφνης)」を巡る議論――

発表者:山田庄太郎(聖心女子大学)

要旨
 アウグスティヌスは、『神の国』(13.9-11)で、死の瞬間の問題を扱っている。生きている人は未だ「死を迎える」ということを経験していない。一方、死んでいる人は既に「死を迎えた」後である。では、生から死への移行である「死ぬ」という事態は、いつ生じるのか。
 この問いは、プラトンの『パルメニデス』(156c-157a)に遡ることが出来、ゲッリウスの『アッティカの夜』(7.13)でも紹介されている。その為、Knuuttilaは、アウグスティヌスがゲッリウスの『アッティカ夜話』の一節を参照していた可能性を示唆しているが、Strobachが指摘するように、アウグスティヌスはプラトン(およびゲッリウス)の結論を採用することにためらいを見せている。むしろアウグスティヌスの議論は、セクストス・エンペイリコスの『学者たちへの駁論』(9.267-276)および『ピュロン主義哲学の概要』(3.110)で展開される議論に近いように思われる。
 それ故、本発表では、まず『神の国』13巻における死の瞬間を巡る議論について確認した上で、それを先行する思想家たちと比較し、アウグスティヌスの独自性と彼がいかなる問題意識の下でこの問題を取り上げているかを明らかにすることを試みる。その上で、『神の国』の一連の議論が、同じく時間を扱う『告白』の議論とどこまで連続的なものであり得るのかを論じることにしたい。


この件に関するお問い合わせは下記教父研究会事務局にお願いいたします。

〒141-8642東京都品川区東五反田三丁目16-21
清泉女子大学文学部文化史学科
坂田奈々絵研究室
mail: secty.jsps [at] gmail.com