第180回教父研究会例会のご案内

第180回教父研究会は 対面(東京大学駒場キャンパス)とZoomを使用したハイブリッド形式での開催を予定しています。皆様のご参加を心よりお待ち申し上げています。

日時
:2024年3月23日(土)14:00–18:00

会場:東京大学駒場キャンパス18号館1階メディアラボ2(最近よく使っていた4階の部屋ではありませんのでご注意ください)

オンライン・ミーティングの URL はメール・手紙にて会員の皆様にお知らせしています。届いていない場合は、お手数ですが事務局までお問い合わせください。

※ URL、ミーティングID、パスコードの第三者への拡散は、くれぐれもご遠慮ください。
※ 参加にあたっては、次の三点を守ってください。
1. 表示名を「氏名」にしてください。
2. 司会者・発表者以外は音声を「ミュート」にしてください。質疑応答の際に司会者に指名されたときのみ「オン」にしてください。
3. 質問するときは「手を挙げる」機能を用い、司会者に指名されるのをお待ちください。

非会員の参加も可能となっております。関心のありそうなお知り合いがいらっしゃる場合は、「非会員専用参加受付フォームhttps://forms.gle/y9ZjGwMqM6U11NsS8」をご案内ください。

発表題目 1:ディオニュシオス・アレオパギテースにおける祈りと讃美

発表者:寺島奈那(早稲田大学)

要旨
 本発表では、ディオニュシオス・アレオパギテース『神名論』における「神の名の解明」の理解の一助として、「祈り」と「讃美」という行為の性質と内容を検討する。神の名は、それが「神の」名である限り、ただ呼ばれるものではなく、神に祈りを捧げ、神を讃えるために用いられるものである。ディオニュシオスは『神名論』において神の名を論じる際、重ねてそれを「讃美する」という表現を用いる。そのため、ディオニュシオスにおいて讃美は神の名に対する基本姿勢であると言える。対して祈りという語は『神名論』では第3章で用いられるのみである。しかし、そこで示されるディオニュシオスの祈りの理解は、新プラトン主義、特にイアンブリコスやプロクロスの祈りの議論のその由来を持つものであり、同様に新プラトン主義的な理論を用いて述べられる神の名と関連して鍵概念になると考えられる。
 本発表では、ディオニュシオスの思想を新プラトン主義的な背景から理解するという方針を採り、讃美と祈りについて、『神名論』での用例を中心に、他のディオニュシオスの著作や新プラトン主義者の著作での用例も併せて確認しながら、その特徴や内容を検討する。まず『神名論』第3章の祈りについての記述を検討し、ディオニュシオスの祈りの特徴と神の名との関係を明らかにする。次に、祈りの方法の一つとして讃美を取り上げ、神の名が常に讃美されるものである理由を示す。これらの検討を経て、名を介した神と人間の交流の内容を、人間の行為の側から提示することが、本発表の目標である。

発表題目 2: 『サラセン人とキリスト教徒との対話』における「イスラーム」との神学論争(仮題)

発表者:荻野美櫻子(東京大学)

要旨
 ダマスコスのヨアンネス(c. 675 – c. 750)は、最後のギリシア教父として名高いと同時に、「イスラーム」に対して初めて体系的に反駁した神学者としても知られている。ヨアンネスの「イスラーム」に関する著作として伝わるものは二つあり、一つは『知識の泉』第二部「異端について (De Haeresibus)」第100/101章「イシュマエル派について」、もう一つは『サラセン人とキリスト教徒との対話』である。前者は概説的な記述であるのに対し、後者はより神学的な内容に焦点を絞った著作であり、両者は相補的な関係にあると見なされている。
 『対話』の内容は二つに大分される。一つはキリスト論で、これは100/101章の中でも触れられている。もう一つは悪の起源や自由意志の問題で、これは100/101章内では触れられず、むしろ『知識の泉』第三部「正統信仰論」の内容と関連するものである。
 従来の研究では、100/101章と『対話』の相補関係や、テクスト内に登場する重要概念が同時代の「イスラーム」思想をどれ程正確に反映しているかが強調されてきた。しかし本発表では、当時の「イスラーム」の実際は脇に置き、「正統信仰論」のテクストと比較しながら、『対話』における論争を検討する。これを通じて、ヨアンネスの目に「イスラーム」がどのような存在として映っていたのか、そして「イスラ―ム」との論争がヨアンネスの思想にどのような影響を与えたのかを解明する一助としたい。


この件に関するお問い合わせは下記教父研究会事務局にお願いいたします。

〒141-8642東京都品川区東五反田三丁目16-21
清泉女子大学文学部文化史学科
坂田奈々絵研究室
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