第160回教父研究会は、2017年6月24日(土)14時から18時まで、東京大学駒場キャンパス18号館4階コラボレーションルーム1において開かれます。
今回の研究会においては、2名の発表と総会を予定しています。
- 寒野康太(ドミニコ会)「教父研究としての『四世紀のアリウス派』──教父学研究史上に再び位置づけることは可能なのか」
- メッセージ:
ヴィクトリア朝の文人として、また英国の十九世紀の教会関係者としてジョン=ヘンリー・ニューマン(1801-1890)の名は人口に膾炙しており、また教父たちの存在が彼の英国聖公会の改革運動たるオックスフォード運動において大きな比重を占めていたことも一般的に知られている。しかし、現在の教父研究においてニューマンの名を見ることはほとんどないと言ってよい。 それゆえ次の様な疑問が生じよう。「彼の研究を現代の諸研究のなかに位置づけることになにがしかの意義を見いだすことが出来るだろうか、意義があるとしたら、それはどのような点に見いだし得るのか。」という問いである。拙論においてこのことを探るべく、オックスフォード運動初期の教父研究書「四世紀のアリウス派(The Arians of the Fourth Century, 1833年刊)」を分析し、その歴史的背景と受容を検討することしたい。またこの調査によってまた、神学研究と教父研究の関連性の考察にもなにがしか寄与できればと考えている。
- メッセージ:
- 松澤裕樹(大谷大学)「エックハルトの父-子関係理解と存在論──アウグスティヌスとトマス・アクィナスとの比較から」
- メッセージ:
アリストテレスの『範疇論』に由来する「実体」と「関係」という二つのカテゴリーによって神が語られるとする思想的伝統は、西方ラテン世界ではアウグスティヌスに端を発し、中世のスコラ哲学へと継承されてきた。トマス・アクィナスと同様に、ドミニコ会士であったエックハルトもまた、この思想的伝統を踏襲し、「父」と「子」を「関係」カテゴリーによって語られる神の名として理解した。
しかし、論理学的に「関係」カテゴリーによって理解された「父」と「子」が果たして「関係」として存在するのかという存在論的問題になると、エックハルトは上記の思想的伝統から脱却し、彼独自の思想を展開し始める。「父」と「子」に関する論理学的理解が成立する前提として、「父」と「子」が「実体」として存在する必然性を説き、両者が「関係」として存在することを否定するアウグスティヌスに対し、エックハルトはそれを肯定し、「関係」を中核とする新たな存在論を展開する。
本発表では、エックハルトの思想に多大な影響を与えた二人の神学者アウグスティヌスとトマス・アクィナスの父-子関係理解を論理学的・存在論的観点から考察し、エックハルトのそれと比較することで、アウグスティヌス以来の思想的伝統から脱却したエックハルト存在論の内実を確認していく。
- メッセージ:
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東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻
高橋英海 mail: takahashi[AT]@ask.c.u-tokyo.ac.jp