第138回教父研究会のご案内

第138回教父研究会は、2011年12月3日(土)14時~17時、聖心女子大学1号館4階大会議室において開かれます。皆様のご参加をお待ち申しあげております。

  • 寺川泰弘(筑波大学大学院人文社会科学研究科一貫制博士課程倫理学専攻)「ヨアンネス・クリマクスにおける「神の前に立つ人間」とは誰か?」
    • メッセージ:筆者はこれまで、ヨアンネス・クリマクスの著した”Scala Paradisi”(『楽園の梯子』)の神へと向かう霊的な30階梯の第一の階梯から第三の階梯に標づけられた個々の主題に基づいて考察して(昇って)来た。そこでは、「修道の初めに立つ人間」としての修道士が「神の前に立つ人間」へと昇華して行くために、どのような生の在り様が追求されなければならないかが展開された。
       クリマクスにとって、修道士とは、προκοπή (前進)という言葉が十全に言い表しているように、絶えることのない修練のうちに彼の生全体が依拠しており、日々、神の呼ばわる声に従って神へと向かう霊的な苦闘を祈りのうちに闘い抜くことによって、今ある自らを超え出て、一段一段、神へ近づいて行こうとする存在である。しかし、こうした存在になって行くためには、「この世の放棄」という超え難い障壁を乗り超えて行くことが修道士に敢然と要求され、様々な諸相を通じて襲い来る悪魔との相克を経て、神を仰ぎ見る生への向き直しに否応なく迫られるのである。
       したがって、クリマクスはこの初期の三段階において「この世の放棄」を実現するための方向性を示す。それが、日毎、新しくなることを目指して実践に従事する修道士の精神的、内的な心の在り様である、ἀποταγή (放棄)、ἀπροσπάθεια (欲望からの離脱)、ξενιτεία (流謫-この世の寄留者となること)である。これらを綜合することによって、クリマクスの求める「神の前に立つ人間」としての生の輪郭がいっそう明らかにされるであろう。そのことを本発表の考察の中心に置きたい。

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