第136回教父研究会のご案内

第136回教父研究会は、<フィロカリア・シンポジウム>として特別講演および発表2本を予定しております。例会の前には総会も開催されます。研究会は、2011年6月25日(土)13時~17時、聖心女子大学1号館4階大会議室において開かれます。皆様のご参加をお待ち申しあげております。 特別講演:大森正樹(南山大学教授)「観想の『文法書』としてのフィロカリア」 メッセージ:18世紀にコリントの府主教マカリオスと聖山のニコデーモスによって編纂され、ヴェネチアで出版された『フィロカリア』は、おおよそ3世紀ごろの砂漠の師父から始まって、15世紀ごろに至る(ビザンティン帝国の存続期間と照応する)師父たちの著作を網羅する霊的著作選集である。このような霊的詞華集ともいうべきものを編纂しなければならなかった時代の要求は、一つにこの選集の中に(ということは収録されている師父たちの生活の中に)霊的生活の理想を見出すということにある。従って、以降この書は東方キリスト教世界の霊的意識において重要な位置を占め、修道院で繰り返し朗読され、あるいは読まれるだけでなく、一般信徒の生活にも、教会での説教等を通して浸透していったと考えられる。 今回、『フィロカリア』をテーマとして取り上げるに際し、発表者は『フィロカリア』が霊的指南書であることを鑑みて、比喩的に、霊的観想の一種の「文法書」として考えてみたい。従ってそこで取り扱われる語彙や構文が問題になるだろう。それは初期のアントニオスなどの砂漠の師父では、萌芽的に姿を現していたものが、時代とともに徐々にある形、また方向をとるに至り、いわゆるヘシカズムに結実していったということを前提にしている。 ただし発表の内容は、『フィロカリア』全体を鳥瞰するのではなく、発表者がその翻訳に関わったビザンティン後期の著作に限定して話を進めたい。 発表1:袴田玲(東京大学大学院博士課程)「『フィロカリア』成立の背景」 メッセージ:『フィロカリア』はどのような意図で、誰のために編まれた書であるのだろうか。本発表は『フィロカリア』編纂者ニコデーモスとマカリオスの生涯および編纂の経緯を紹介し、彼らが主導した霊性復興運動(ヘシカズム・ルネサンスとも評される)の考察を中心にすえる。その際に手がかりとなるのが、『フィロカリア』冒頭のニコデーモスによる序と、彼の著作『頻繁な聖体拝領について』である。また、本発表を通じて、東方正教世界と西欧カトリック世界(とりわけイタリアはヴェネチアにおける)の歴史的交流についても明らかにしてゆきたい。 発表2:袴田渉(東京大学大学院博士課程)「ダマスコスのペトロスにおける修行階梯論」 メッセージ:本発表は、おそらく12世紀ごろに活躍したとされ、「フィロカリアの要約」と言われるダマスコスのペトロスの著作を、とりわけ「八つの観想(覚知)」と題された箇所に焦点を当てて読解し、そこに見られる彼の修行階梯論を考察する。そしてこの考察を通じて、ペトロスにおけるヌースνοῦςの意義とその用法の一端を明らかにすることを目指す。本発表は、ペトロスの理解に止まらず、東方キリスト教の人間観についての考察ともなるはずである。 特定質問者 出村和彦(岡山大学) 司会 土橋茂樹(中央大学)

3月19日(土)開催予定の教父研究会例会中止のお知らせ

未曾有の大震災で被害を受けた方々に、心からお見舞い申し上げます。 委員会で検討した結果、大震災直後であり、計画停電や交通事情悪化の影響、さらに会場となる聖心女子大の御事情(3月22日まで学内の全ての行事中止と入構自粛)を考慮し、19日(土)の教父研究会例会の開催は困難と判断し、中止とさせていただきます。 御発表を御準備いただいていた村上寛さん、松村康平さんはもちろんのこと、大会参加を予定されていた方々にも、心よりお詫び申し上げます。どうかご容赦いただきますようお願い致します。 教父研究会事務局 土橋茂樹

135th JSPS seminar

135th JSPS seminar will be held on 19 March 2011 1 pm to 5 pm at the Main Meeting Room, 4th fl. Bild. 1, University of the Sacred Heart. Kohei Matsumura (Graduate School of Theology, Sophia University), ‘Dialogue at Ostia.’ Hiroshi Murakami (Graduate School of Waseda University), ‘Transformation of Love or Transformation in Love: The Openness for Transcendence in the Mirror of Simple Souls.’

第135回教父研究会のご案内

第135回教父研究会は、2011年3月19日(土)13時~17時、聖心女子大学1号館4階大会議室において開かれます。皆様のご参加をお待ち申しあげております。 松村康平(上智大学大学院神学研究科)「オスティアの対話」 メッセージ:アウグスティヌス(354-430)は、387年の秋の日、港町オスティアにおいて母モニカとの対話の最中に、言語にし難い体験をしたという。それは『告白』第Ⅸ巻に記され、知られている。本発表では、このオスティアの対話を取り上げ、その対話がいかなる意味をもつのかという点へと焦点を当てたい。ミラノ体験(第Ⅶ巻)、そして庭の回心(第Ⅷ巻)を経て、辿り来た彼はこの対話においていかなる意味に触れたのだろうか。考察を深めたい。 村上寛(早稲田大学大学院)「愛の変容、或いは愛への変容──『単純な魂の鏡』における超越への開け」 メッセージ:1310年6月1日、パリで一人の女性がその異端思想を理由に処刑された。その女性とはエノー出身のポレートと呼ばれるマルグリット、通称マルグリット・ポレートであり、彼女のおそらく唯一の著作が『単純な魂の鏡』である。本発表では神秘的著作とされる『鏡』について、その重要な概念の一つである「愛の変容」或いは「愛への変容」を中心として考察し、その「神秘思想」について明らかにしていきたい。

第134回教父研究会のご案内

第134回教父研究会は、2010年12月11日(土)14時~17時、聖心女子大学1号館4階大会議室において開かれます。皆様のご参加をお待ち申しあげております。 髙橋英海「エヴァグリオス(偽ネイロス)『祈りについての一五三の断章』のシリア語・アラビア語による伝承について」 メッセージ:従来ギリシア語圏ではアンキュラのネイロス(430年頃没)の作品とされてきた『祈りについての一五三の断章』は、シリア語訳およびアラビア語訳ではエヴァグリオスの作品として流布しており、近代以降の研究によってエヴァグリオス(345頃─399年)の作品であることがほぼ確実となっている。今回の発表では、この『一五三の断章』全体について概観した上で、ギリシア語原典とシリア語訳およびアラビア語との比較を行い、その差異から何が読み取れるかについての考察を試みる。

欧文版『パトリスティカ』第3号刊行に関するお知らせ

教父研究会は、2011年に欧文版『パトリスティカ』第3号を刊行することに決定しました。これは、2001年にはじめての欧文号Patristica Supplementary Volume 1、ついで2006年に欧文版第2号を東京都立大学名誉教授加藤信朗氏への献呈論文集として刊行したのにつづく計画です。この企画に賛同し、投稿を希望されるかたからのお申し出をおまちしています。 投稿された論文については、編集委員または、編集委員会の委嘱するレフェリーが審査を担当します。 論文の使用言語は、英語、ドイツ語、フランス語のいずれかとします。 投稿のしめきりは、2011年6月1日とします。 論文の投稿を希望されるかたは、2010年12月31日までに編集委員の上村直樹 <kmmrnk[atmark]gmail.com> までご連絡ください。なお、そのさい必ず論文のタイトル(仮題でもかまいません)をあわせてお知らせください。 この欧文号の詳細については、編集委員の土橋茂樹 <tsuchi[atmark]tamacc.chuo-u.ac.jp>、あるいは上村直樹までおたずねください。