第186回教父研究会例会のご案内

第186回教父研究会は 対面(東京大学駒場キャンパス)とZoomを使用したハイブリッド形式での開催を予定しています。皆様のご参加を心よりお待ち申し上げています。

日時
:2025年9月21日(日)14:00–18:00 ※通例と異なり日曜日の開催となりますのでお気をつけください。

会場:東京大学駒場キャンパス18号館4階コラボレーションルーム3

オンライン・ミーティングの URL はメール・手紙にて会員の皆様にお知らせしています。届いていない場合は、お手数ですが事務局までお問い合わせください。

※ URL、ミーティングID、パスコードの第三者への拡散は、くれぐれもご遠慮ください。
※ 参加にあたっては、次の三点を守ってください。
1. 表示名を「氏名」にしてください。
2. 司会者・発表者以外は、音声を「ミュート」にしてください。質疑応答の際に司会者に指名されたときのみ、「オン」にしてください。
3. 質問するときは「手を挙げる」機能を用い、司会者に指名されるのをお待ちください。

非会員の参加も可能となっております。関心のありそうなお知り合いがいらっしゃる場合は、「非会員専用参加受付フォームhttps://forms.gle/U6XVPuB9eHybf7uJ7」をご案内ください。

発表題目 1: アナスタシウス帝期における地方修道士のコンスタンティノポリス駐在と社会混乱──「三聖唱の暴動」を例に

発表者:胡 昶旭(東京大学)

要旨
報告では、アナスタシウス帝期(位491–518)に首都コンスタンティノポリスで2度発生した「三聖唱の暴動」(511年、512年)に焦点を当てる。どちらも「ἅγιος ὁ θεός, ἅγιος ἰσχυρός, ἅγιος ἀθάνατος」の後に「ὁ σταυρωθεὶς δι’ ἡμᾶς」という文言を一部の信徒が追加したことが契機である。これらの騒擾は読師テオドロス『教会史』をはじめ様々な史料が伝えており、先行研究では教会政治の展開、宮廷と首都教会の関係、さらにはアナスタシウス帝の政治手腕などの視点から論じられてきた。
しかし、先行研究が詳細な分析を欠いてきた側面がある。首都に一時滞在中の修道士らの関与、ならびに彼らと首都社会との関係である。実際、読師テオドロスによれば、511年の暴動を引き起こしたのは当時コンスタンティノポリスに滞在中のソゾポリスのセヴェロス率いる200人余のパレスティナ修道士と一部の民衆であった――この事件に関するセヴェロス本人の書簡も断片ながらコプト語訳で伝存している。また、512年の暴動を伝えるヨアンネス・マララス『年代記』には、暴徒たちが官僚マリノスの邸宅を襲撃する際、ある「東方出身の修道士」に出くわしてこれを惨殺したとある。
そこで本報告では、文献史料を主たる手がかりとしつつ、セヴェロスなど地方の修道士たちが首都社会での一時滞在中にどこを拠点とし、いかなる空間、いかなる社会集団と関わり合い、それらの都市景観や諸社会関係が「三聖唱の暴動」においていかに反映され、またいかに変容したかを考察する。この作業を通じて、6世紀初頭の教会政治史の社会史的分析を試み、「ローマ史的な」教会政治史の試論としたい。

発表題目 2: ギリシア語翻訳者ヒエロニュムス:オリゲネス『エレミヤ書説教』を例に

発表者:加藤哲平(九州大学)

要旨
 本発表の目的は、オリゲネス『エレミヤ書説教』に基づいて、ギリシア語翻訳者としてのヒエロニュムスの翻訳の特徴を明らかにすることである。オリゲネスの著作の多くはヒエロニュムスとルフィヌスのラテン語訳を通して伝えられてきたが、これらの翻訳は真剣に研究されてきたとは言い難い。なぜなら、オリゲネス研究においては、彼の思想を直接伝えるギリシア語原典が最も重視されるからである。ラテン語訳は、ギリシア語原典が現存しない場合に、オリゲネスの記述を間接的に知るための次善の策として利用されるにすぎない。ゆえに、ギリシア語原典とラテン語訳が揃っているときのラテン語訳は顧みられてこなかった。つまり、オリゲネス研究におけるテクストの重要度は、ギリシア語原典、ギリシア語原典がないときのラテン語訳、そしてギリシア語原典があるときのラテン語訳の順に低くなる。本発表は、著者オリゲネスではなく翻訳者ヒエロニュムスを研究の対象とすることによって、この最も重要度が低いとされてきた、ギリシア語原典が現存するときのラテン語訳に光を当てる。そしてそうすることで、ヒエロニュムスをヘブライ語翻訳者としてのみならず、ギリシア語翻訳者として再評価することを試みる。


この件に関するお問い合わせは下記教父研究会事務局にお願いいたします。

〒150-8938東京都渋谷区広尾4-3-1
聖心女子大学現代教養学部哲学科 山田庄太郎研究室
mail: secty.jsps [at] gmail.com