第178回教父研究会例会のご案内

第178回教父研究会は 対面(東京大学駒場キャンパス)とZoomを使用したハイブリッド形式での開催を予定しております。また、例会の前には、臨時総会が開催されます。前回の総会にてお知らせしました通り、会誌『パトリスティカ』のオンライン刊行への移行が議題となります。皆様のご参加を心よりお待ち申し上げております。

日時:2022年10月1日(土)14:00-14:30 臨時総会;14:30-18:00 例会

会場:東京大学駒場キャンパス18号館4階コラボレーションルーム1

オンライン・ミーティングの URL はメール・手紙にて会員の皆様にお知らせしています。届いていない場合は、お手数ですが事務局までお問い合わせください。

参加にあたっては、次の三点を守ってください。
1. 表示名を「氏名」にしてください。
2. 司会者・発表者以外は音声を「ミュート」にしてください。質疑応答の際に司会者に指名されたときのみ「オン」にしてください。
3. 質問するときは「手を挙げる」機能を用い司会者に指名されるのをお待ちください。

非会員の参加も可能となっております。関心のありそうなお知り合いがいらっしゃる場合は、「非会員専用参加受付フォーム https://forms.gle/GTNF6z8YNvMYsEWr9」をご案内ください。

発表題目 1: 4世紀後半のシリア・キリキアにおけるイグナティオスの記憶の活用─偽作書簡集とヨアンネス・クリュソストモスの講話における殉教の位置づけをめぐって─

発表者:砂田恭佑(東京大学)

要旨
 イグナティオスは2世紀初頭にアンティオキアで監督を務め、ローマで殉教した人物であり、その書簡集(7通)が知られている。またその殉教を熱望する鮮烈な言葉遣いは研究者の関心をも惹きつけてきた。さて、殉教が一応は過去のものとなった4世紀後半にあって、殉教者イグナティオスの記憶はどのように継承されていたのか。この時期に出現した二つのテクストが、この問いに対する回答を示している。
 一方は、上記の書簡に改竄を加え、新たに6通を附した偽作書簡集である。その年代と著者が研究者たちの間で議論となってきたが、年代は4世紀後半、著者はシリア近辺の穏健な従属論を奉じる集団に属するというのが多数派の合意といってよい(発表者はその背景をより詳細に特定できると考える)。この偽作者=改竄者の主たる関心は神学と教会規律にあり、真正書簡でも展開されているそれらの論点を同時代の読者に合わせて膨らませる際、殉教に関しては(せっかくの印象的な)文意を枉げることもいとわない。
 他方にはヨアンネス・クリュソストモスの『聖イグナティオス講話』がある。イグナティオスの主教としての徳、使徒との関係、高貴な殉教などが講話の主たる主題であるが、前者二つはパウロ書簡に基礎づけて語られ、個性に着目した賞賛は殉教者としての一面を語る際に最も現れる。殉教記念日の講話である以上当然とも言えるが、アンティオキアの状況や崇敬の実態の中に置くと、市の信徒のアイデンティティー形成に細心の注意を払う説教者像も垣間見える。
 本発表では、とりわけ両テクストの殉教に対する扱いを比較し、両者とその担い手の関心を明らかにすることを試みる。

発表題目 2: 対話篇を書くこと─アウグスティヌス前期著作における文体の問題─

発表者:石川知輝(東京大学)

要旨
 アウグスティヌスは多様な文体を駆使した書き手であったが、本発表はその中でも前期に書かれた対話篇という文体に注目し、その哲学的意義を考察する。
 対話篇はアウグスティヌスにおいて前期著作の8作品にしかみられず、中期以降は全く執筆されることがなかった。このことからしばしば、前期対話篇は古代哲学の表面的模倣であり、彼自身の思想の未熟さを示すものであると評価されてきた。それに対して本発表では、中期・後期の成熟した思想の側から前期著作を検討するのではなく、前期著作においてアウグスティヌスが実現しようとしていた哲学の営みとは何であるか、という問いのもとに対話篇という文体について考察する。本発表が提示することを目論むのは以下の点である。
 1. アウグスティヌスの哲学において、著作の内容(=哲学の対象)と形式(=文学の対象)という二分法は当てはまらない。むしろ文体はアウグスティヌスの哲学的実践の重要な一端を担うものである。
 2. 対話篇という文体は著作内では議論の説得力をもたらす仕掛けとして、著作外では読者に対する哲学のすすめ(プロトレプティコス)として効果を発揮する。
 3. 以上で示された対話篇の効果は、『教師論』で言語の働きの限界として示される「促し admonitio」の概念によって説明することができる。


この件に関するお問い合わせは下記教父研究会事務局にお願いいたします。

〒141-8642東京都品川区東五反田三丁目16-21
清泉女子大学文学部文化史学科
坂田奈々絵研究室
mail: secty.jsps [at] gmail.com